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「君への手紙」

「君への手紙」

冬の公園。低い太陽、木々も長い影をひく午後。
乗り手のいない錆びついたブランコ。
貸自転車屋の老人も居眠りをしている。
まるで絵画のように何一つ動かない景色の中で、
時折吹きつける冷たい風だけが、
ざあっと落ち葉をさらってゆく。
最新型のウォークマンから流れてきたのは、
いつか君が教えてくれた、懐かしい歌。

そう、僕らは、ふたたび、会うべきなんだ。

この文章をここまで読んだ君は、きっと、
「あいかわらずだね」
とキーボードを叩き、しばらくは思案しても結局、
送信ボタンは押さないだろう。
そして、かたわらに置かれたマグカップを口にする。
君のカフェラテはすっかり冷めている。

そして僕も、もう以前のように、君からのメールを
いちいち待ちわびて受信フォルダを開くことはしない。
僕は気づいてしまった。
僕らに残された時間が、多くはないってことに。
カフェラテは暖かいうちに飲むに限るってことだ。
いや、何の話だったかな。

そう、僕らは、ふたたび、会うべきなんだ。

止まったオルゴールのネジを巻きなおし、
砂時計をひっくり返し、
高く頑丈な壁を打ち砕き、
凍てついた時間を溶かし、
絡まった糸をほどき、
書きかけの物語を綴り、
好きな音楽の話、失くした恋の話・・・

懐かしい話も尽きた頃、君は僕にこう言うんだ。
「あいかわらずだね」って。

それは僕にとって最高の褒め言葉だとも知らずに。
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# by rocknrollnight | 2013-12-13 14:22

「SOMEDAY」名盤ライブ

1982年、当時17歳の僕は、佐野元春のLP「SOMEDAY」と
幸運にも巡り会えた。
その楽曲は、30年経った今も色あせず、
僕の深いところで、僕を支えてくれている。

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そして、2013年初冬。
お台場の海辺にに孤高とそびえ立つ勇者ガンダムは
きっと不思議に思っている。
この中高年の集まりはなんだろうか?と。

*
入場すると、デュランデュランなど懐かしいBGMが流れ
ていて、80年代の匂いが漂う。
1階は、オールスタンデイング。みんな年齢層高く、
ひざや腰に不安を抱えて、最後まで立ってられるのか?
と心配になる。(おっと自分もか!)

*
やがて客電がおちて、ムービーが流れる。
「SOMEDAY」のLP盤パッケージから、ビニール盤が取り出さ
れ、ターンテーブルに。ゆっくりと針が降りる。
ジジジ・・・

*
シュガータイム
  「名盤ライブ」のスタート。1枚のアルバムを収録曲順に、
  アレンジもそのままに演奏するという試み。
  かしこまった感じは無い。みんな陽気に歌っている。
*
ハッピーマン
  ダディ柴田登場。骨太なサックスが懐かしい。
*
ダウンタウンボーイ
  「今夜は、みんな80年代にタイムワープしよう!」
  このアレンジはライブ初演奏。
*
二人のバースディ
  古田カウント始めたが、
  「ちょっと待って!忘れてた!今日、誕生日の人いる?」
*
麗しのドンナ・アンナ
  おそらく、ライブ初演奏。
*
サムデイ
  ダディのソロに元春が近づく。このツーショットが
  また見られるとは!
*
暗転、ふたたびムービー。
レコードをB面に、ひっくり返す。
ジジジ・・・

*
アイム・イン・ブルー
*
真夜中に清めて
  ライブ初演奏。
  「Midnight tripper
 Tonight Everybody」
  抑えたボーカルから一転、サビは叫ぶように響く。
  個人的には今夜一番の感動。しびれた~。
*
ヴァニティ・ファクトリー
  今後、ライブ定番になるのでは?
  というほどの超盛り上がり。
*
ロックンロール・ナイト
*
サンチャイルドは僕の友達
  伊藤銀次が登場。元春と椅子に座ってハモる。

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アンコール

「(来日中の)ポール(マッカートニー)じゃなくて、
僕の方を選んでくれてありがとう」
「SOMEDAYと同時期に発表されたアルバムがあるんだ」

*
Bye Bye C-Boy
*
マンハッタンブリッヂにたたずんで
  「本来ならアルバム・サムデイに入るべき曲だったけれど、
   大瀧さんがナイアガラに入れたいと・・・でも、もう
   どうでもいいんだ。どっちのアルバムに入っていても、
   みんな聴いてくれたんだろ?」
*
彼女はデリケート
  再び銀次登場!
  よく、下手なライターが書く。
  会場のボルテージは最高潮にヒートアップした、と。
  それは、嘘だ。あらゆる形容を超えている。
  例えようもなく、ただ楽しいだけだ。

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2013.11.16
Zepp ダイバーシティ東京
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# by rocknrollnight | 2013-11-17 23:41

「蒼い夜」

「蒼い夜」

あなたの涙の理由(わけ)を聞けずに
そっと肩を抱く

蒼い月明かりだけが
僕らを 優しく包んでいた

 遠い思い出の
 あの日に帰れたなら

 もっと強く
 もっと強く
 あなたを
 抱きしめるのに


何かを話せば 失いそうで
ずっと肩を抱く

やわらなか風があなたの
髪を 優しくなでてゆく

 遠い思い出の
 あの日に言えなかった

 約束なら
 時の流れの
 ほとりに
 置いてきたよ

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自作の歌詞ですが、自分のどこをくすぐれば
こんなデリケートな言葉が浮かぶのか、自分
でもわかりません。
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# by rocknrollnight | 2012-09-04 12:11

ランナーズ、ハイ!(後編)

(前編からのつづき)
*
正直、スタートの合図は聴こえなかった。周りのランナーが走った
ので、何となく走り出した。
みんなランニングシャツに短パンで軽快に走りだす。
ヒートテックにTシャツを重ね着しているのは自分だけか。
「どうせいつか歩くのだから、行けるとこまで飛ばそう」
という作戦を立てた。実際には未知の距離なので作の立てようがなく、
無計画ということだ。制限時間は70分、昔やっていたサッカーの試合が
35分ハーフだったので、70分間走るという時間の感覚だけはあった。
待てよ?サッカーにはハーフタイムという休憩時間があるのだった。
*
1キロまでは山裾を昇り、その先2キロまでは下ってゆく・・・速い。
みんな速い。老若男女に追い抜かれてゆく。
「皆さ~ん、景色を見ませんか?日本の四季を堪能してますか?
そんなに急いで生きてどうするんですか?がんばらなくてもいいよ」
すでに3キロ地点で、集団に付いてゆけなくなる。
「一緒に走ろう、裏切んなよ」と約束した友の背中が遠ざかる。
沿道の応援に笑顔を振りまく余裕は既にない。自分の生い立ちも
フラッシュバックしないし、亡くなった友のことも思いだす余裕
も無い。呼吸すら規則的にコントロールできない。
ただひたすら、右足を踏み出したら、次に、左足を踏み出す。
その繰り返しだ。右、左、右、左・・・
いざと言う時、自分はあまりにも無力だ。
*
4キロ地点、もうだめだ、歩こうか?
体温も上がり過ぎている。ヒートテックの効果大だ。
さすがヒット商品、ユニクロ偉い。暑いっ。
同時に朝のコーヒーがぶ飲みのおかげで、尿意が襲ってきた。
確か、折り返し地点にトイレがあったはずだ。そこまでは走ろう。
*
折り返し地点、トイレに駆け込み、ヒートテックを脱ぐ。その間、
かなりのランナーに抜かれてしまうが、モラシながらは走れない。
すぐ戻り、給水ポイントで水をもらう。底の浅い紙コップなので、
走りながらでは口にうまく入らず、かなりの量をこぼしてしまい、
結果、モラシたように見えてしまっている。
*
そそのかした、いや、誘ってくれた親友が前方を歩いている。
ひざを痛めたようだ。心配だが、息が苦しく声が出ない。
*
ランナーズハイっていつ訪れるのか?
ランナーズ「ロー」状態から抜け出せない。
残り3キロ、住宅地に入り沿道からしきりに声がかかる。
これだけ見知らぬ他人からエールを送られることってあるだ
ろうか?ふりまく笑顔も作れないのは申し訳ないが、せめて
歩かないようにはしようと誓う。
*
あと2キロ、最後の心臓破りの坂では、2人のスタッフから、
「心臓大丈夫ですか?」と声をかけられる。そんなに苦悶の
表情をしているのか?
ゴールが見えた。
*
若いうちしかできないことがある。
マラソン大会に参加して完走することも、その一つだとは思う。
それよりもきっと大切なこと。
太陽の下「どうだった?」「つかれた~」と、
友と共通の空気、時間を過ごすことだ。
*
(ぜひ、ちびまる子ちゃんのナレーターの声で)
この時点では、翌朝のひざの激痛を知るよしもないのだった。
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# by rocknrollnight | 2011-12-03 16:50

ランナーズ、ハイ!(前編)

*
若いうちしかできないことがある。
女子に告白しフラレ、あげく学校中に言いふらされたり、
ナイフみたいに尖っては、触るものみな傷つけたり、
盗んだバイクで走り出す行く先もわからぬままだったり、
(バイク盗んじゃいけません)
とにかく、若いうちしかできないことがある。
*
「10キロ?」
「そう、10キロ」
熱した石の上で生イカが、その身をよじりながらも、じゅうと
香ばしく焼けてゆく。
「走るの?」
「そう、走る。もうイカ焼けてるんじゃない?」
今にして思えば、清水の居酒屋、美味しい魚と珍しい焼酎に
その夜の自分のテンションは、いつになく高かった気がする。
親友が、イカを口の中で、くちゃくちゃと咀嚼する顔は、
ロバのようにもラクダのようにも見える。
「一緒にどう?」
箸で人を指すな。
*
富士川キウイマラソン。温暖な静岡とはいえ、11月の強風は、
肌に冷たく、走る気力までも凍らせてゆく。
「寒っ!風強いし」勝手わからず会場に早く到着しすぎたので、
ホットコーヒーで暖を取りながら親友にメールを送る。
「今、起きたところだよ」なんてネボケた返信が届く。
*
親友とその弟、知人、自分をふくめて男6人でのエントリー。
スタート地点まで歩く間、みんな余裕で冗談を交わしている。
自分の笑い顔だけ、ひきつっていたのは決して寒さだけではない。
本番まで2ヶ月も有ったにもかかわらず、計2日、3キロしか
走れていなかったからだ。
1度目は2キロ走った地点で、ひざがグキッと異音をはなち、
完治するまで仕方なく、芋焼酎をお湯で割ったりして過ごした。
今度こそと意気揚々に挑んだ
2度目は1キロ走った地点で、足首をグキッと捻り、
完治するまで仕方なく、ウイスキーを炭酸で割ったりして過ごした。
世間で言う不摂生だ。
そして無情にも、スタートの号砲が鳴った!
*
(ぜひ、ちびまる子ちゃんのナレーターの声で)
後半へ続く
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# by rocknrollnight | 2011-12-03 16:48