ボクと清志郎と、時々、吉川

*
この雨にやられてエンジンいかれちまった
俺らのポンコツ とうとうつぶれちまった
         『雨上がりの夜空に』

「ウィ~ッス」
また今日も、呼んでも無いのに吉川は来た。
どうでもいい男なので「きっかわ」でも「よしかわ」でも
かまわないが、一応「よしかわ」だ。
坊主頭に、学生服を不良っぽくルーズに着ている。
「ウィ~ッス」
「部活中なんだけど。帰宅部は去れ」
放課後。音楽室は先輩バンドが練習しているので、
後輩の僕らは楽器置場の埃っぽい部屋で、各人が
それぞれのパートを練習している。
僕は買ったばかりのストラトを抱えてはいるが、
窓の外、下校中の他校の女子生徒ばかり見ている。
「そんな冷たい態度しないでよ。お?ギター買ったの?」
「お前が来るとフ~キが乱れる。ギター触んなよっ」
「いいじゃね~かよ。
この雨にやられて~エンジンいかれちまった~」
イカレてるのは、お前の顔と頭だろ。まったくRCなんて
どこがいいんだ。単純なコードで騒いでるだけだ。

*
昨日は車の中で寝た あの娘と手をつないで
市営グランドの駐車場 2人で毛布にくるまって
              『スローバラード』

「何コレ?」
吉川の部屋。見栄っパリの洋モクの煙が充満している。
「何コレ?」と僕はもう一度、尋ねた。
「何って、親父の部屋からくすねたエロ本」
バカ!じゃなくて
「今、かけてるレコード。RCでしょ?」
「スローバラード。カーラジオから~」
「うるさい!お前が歌うんじゃない!黙って聴け」
何コレ?このせつない感じ。これがRC?

*
Woo 授業をさぼって Yeah 陽のあたる場所にいたんだよ
寝ころんでたのさ 屋上で タバコのけむりとてもあおくて
                『トランジスタ・ラジオ』

佐野元春や糸居五郎のラジオから、最新のヒットチャートや
スプリングスティーン、ビリージョエル、ビートルズ、R&R、
ブリティッシュロック、パンクロック、と何でも聴いていた僕は、
RCサクセションの、忌野清志郎の音楽、メッセージを理解する
ようになった。理解するなんて言葉、似合わないだろう。
感じればいいんだゼ、Baby。
学校の屋上でタバコをふかしながら、尋ねた。
「吉川、卒業したらさあ、どうすんの?」
「あ~そんなことより、セッ○スしたいなあ」
「お前、そればっかりだな」
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by rocknrollnight | 2009-05-10 12:36
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