「ほっ」と。キャンペーン

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「君への手紙」

「君への手紙」

冬の公園。低い太陽、木々も長い影をひく午後。
乗り手のいない錆びついたブランコ。
貸自転車屋の老人も居眠りをしている。
まるで絵画のように何一つ動かない景色の中で、
時折吹きつける冷たい風だけが、
ざあっと落ち葉をさらってゆく。
最新型のウォークマンから流れてきたのは、
いつか君が教えてくれた、懐かしい歌。

そう、僕らは、ふたたび、会うべきなんだ。

この文章をここまで読んだ君は、きっと、
「あいかわらずだね」
とキーボードを叩き、しばらくは思案しても結局、
送信ボタンは押さないだろう。
そして、かたわらに置かれたマグカップを口にする。
君のカフェラテはすっかり冷めている。

そして僕も、もう以前のように、君からのメールを
いちいち待ちわびて受信フォルダを開くことはしない。
僕は気づいてしまった。
僕らに残された時間が、多くはないってことに。
カフェラテは暖かいうちに飲むに限るってことだ。
いや、何の話だったかな。

そう、僕らは、ふたたび、会うべきなんだ。

止まったオルゴールのネジを巻きなおし、
砂時計をひっくり返し、
高く頑丈な壁を打ち砕き、
凍てついた時間を溶かし、
絡まった糸をほどき、
書きかけの物語を綴り、
好きな音楽の話、失くした恋の話・・・

懐かしい話も尽きた頃、君は僕にこう言うんだ。
「あいかわらずだね」って。

それは僕にとって最高の褒め言葉だとも知らずに。
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by rocknrollnight | 2013-12-13 14:22

「SOMEDAY」名盤ライブ

1982年、当時17歳の僕は、佐野元春のLP「SOMEDAY」と
幸運にも巡り会えた。
その楽曲は、30年経った今も色あせず、
僕の深いところで、僕を支えてくれている。

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そして、2013年初冬。
お台場の海辺にに孤高とそびえ立つ勇者ガンダムは
きっと不思議に思っている。
この中高年の集まりはなんだろうか?と。

*
入場すると、デュランデュランなど懐かしいBGMが流れ
ていて、80年代の匂いが漂う。
1階は、オールスタンデイング。みんな年齢層高く、
ひざや腰に不安を抱えて、最後まで立ってられるのか?
と心配になる。(おっと自分もか!)

*
やがて客電がおちて、ムービーが流れる。
「SOMEDAY」のLP盤パッケージから、ビニール盤が取り出さ
れ、ターンテーブルに。ゆっくりと針が降りる。
ジジジ・・・

*
シュガータイム
  「名盤ライブ」のスタート。1枚のアルバムを収録曲順に、
  アレンジもそのままに演奏するという試み。
  かしこまった感じは無い。みんな陽気に歌っている。
*
ハッピーマン
  ダディ柴田登場。骨太なサックスが懐かしい。
*
ダウンタウンボーイ
  「今夜は、みんな80年代にタイムワープしよう!」
  このアレンジはライブ初演奏。
*
二人のバースディ
  古田カウント始めたが、
  「ちょっと待って!忘れてた!今日、誕生日の人いる?」
*
麗しのドンナ・アンナ
  おそらく、ライブ初演奏。
*
サムデイ
  ダディのソロに元春が近づく。このツーショットが
  また見られるとは!
*
暗転、ふたたびムービー。
レコードをB面に、ひっくり返す。
ジジジ・・・

*
アイム・イン・ブルー
*
真夜中に清めて
  ライブ初演奏。
  「Midnight tripper
 Tonight Everybody」
  抑えたボーカルから一転、サビは叫ぶように響く。
  個人的には今夜一番の感動。しびれた~。
*
ヴァニティ・ファクトリー
  今後、ライブ定番になるのでは?
  というほどの超盛り上がり。
*
ロックンロール・ナイト
*
サンチャイルドは僕の友達
  伊藤銀次が登場。元春と椅子に座ってハモる。

--------------------------------------------------
アンコール

「(来日中の)ポール(マッカートニー)じゃなくて、
僕の方を選んでくれてありがとう」
「SOMEDAYと同時期に発表されたアルバムがあるんだ」

*
Bye Bye C-Boy
*
マンハッタンブリッヂにたたずんで
  「本来ならアルバム・サムデイに入るべき曲だったけれど、
   大瀧さんがナイアガラに入れたいと・・・でも、もう
   どうでもいいんだ。どっちのアルバムに入っていても、
   みんな聴いてくれたんだろ?」
*
彼女はデリケート
  再び銀次登場!
  よく、下手なライターが書く。
  会場のボルテージは最高潮にヒートアップした、と。
  それは、嘘だ。あらゆる形容を超えている。
  例えようもなく、ただ楽しいだけだ。

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2013.11.16
Zepp ダイバーシティ東京
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by rocknrollnight | 2013-11-17 23:41

「蒼い夜」

「蒼い夜」

あなたの涙の理由(わけ)を聞けずに
そっと肩を抱く

蒼い月明かりだけが
僕らを 優しく包んでいた

 遠い思い出の
 あの日に帰れたなら

 もっと強く
 もっと強く
 あなたを
 抱きしめるのに


何かを話せば 失いそうで
ずっと肩を抱く

やわらなか風があなたの
髪を 優しくなでてゆく

 遠い思い出の
 あの日に言えなかった

 約束なら
 時の流れの
 ほとりに
 置いてきたよ

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自作の歌詞ですが、自分のどこをくすぐれば
こんなデリケートな言葉が浮かぶのか、自分
でもわかりません。
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by rocknrollnight | 2012-09-04 12:11

ランナーズ、ハイ!(後編)

(前編からのつづき)
*
正直、スタートの合図は聴こえなかった。周りのランナーが走った
ので、何となく走り出した。
みんなランニングシャツに短パンで軽快に走りだす。
ヒートテックにTシャツを重ね着しているのは自分だけか。
「どうせいつか歩くのだから、行けるとこまで飛ばそう」
という作戦を立てた。実際には未知の距離なので作の立てようがなく、
無計画ということだ。制限時間は70分、昔やっていたサッカーの試合が
35分ハーフだったので、70分間走るという時間の感覚だけはあった。
待てよ?サッカーにはハーフタイムという休憩時間があるのだった。
*
1キロまでは山裾を昇り、その先2キロまでは下ってゆく・・・速い。
みんな速い。老若男女に追い抜かれてゆく。
「皆さ~ん、景色を見ませんか?日本の四季を堪能してますか?
そんなに急いで生きてどうするんですか?がんばらなくてもいいよ」
すでに3キロ地点で、集団に付いてゆけなくなる。
「一緒に走ろう、裏切んなよ」と約束した友の背中が遠ざかる。
沿道の応援に笑顔を振りまく余裕は既にない。自分の生い立ちも
フラッシュバックしないし、亡くなった友のことも思いだす余裕
も無い。呼吸すら規則的にコントロールできない。
ただひたすら、右足を踏み出したら、次に、左足を踏み出す。
その繰り返しだ。右、左、右、左・・・
いざと言う時、自分はあまりにも無力だ。
*
4キロ地点、もうだめだ、歩こうか?
体温も上がり過ぎている。ヒートテックの効果大だ。
さすがヒット商品、ユニクロ偉い。暑いっ。
同時に朝のコーヒーがぶ飲みのおかげで、尿意が襲ってきた。
確か、折り返し地点にトイレがあったはずだ。そこまでは走ろう。
*
折り返し地点、トイレに駆け込み、ヒートテックを脱ぐ。その間、
かなりのランナーに抜かれてしまうが、モラシながらは走れない。
すぐ戻り、給水ポイントで水をもらう。底の浅い紙コップなので、
走りながらでは口にうまく入らず、かなりの量をこぼしてしまい、
結果、モラシたように見えてしまっている。
*
そそのかした、いや、誘ってくれた親友が前方を歩いている。
ひざを痛めたようだ。心配だが、息が苦しく声が出ない。
*
ランナーズハイっていつ訪れるのか?
ランナーズ「ロー」状態から抜け出せない。
残り3キロ、住宅地に入り沿道からしきりに声がかかる。
これだけ見知らぬ他人からエールを送られることってあるだ
ろうか?ふりまく笑顔も作れないのは申し訳ないが、せめて
歩かないようにはしようと誓う。
*
あと2キロ、最後の心臓破りの坂では、2人のスタッフから、
「心臓大丈夫ですか?」と声をかけられる。そんなに苦悶の
表情をしているのか?
ゴールが見えた。
*
若いうちしかできないことがある。
マラソン大会に参加して完走することも、その一つだとは思う。
それよりもきっと大切なこと。
太陽の下「どうだった?」「つかれた~」と、
友と共通の空気、時間を過ごすことだ。
*
(ぜひ、ちびまる子ちゃんのナレーターの声で)
この時点では、翌朝のひざの激痛を知るよしもないのだった。
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by rocknrollnight | 2011-12-03 16:50

ランナーズ、ハイ!(前編)

*
若いうちしかできないことがある。
女子に告白しフラレ、あげく学校中に言いふらされたり、
ナイフみたいに尖っては、触るものみな傷つけたり、
盗んだバイクで走り出す行く先もわからぬままだったり、
(バイク盗んじゃいけません)
とにかく、若いうちしかできないことがある。
*
「10キロ?」
「そう、10キロ」
熱した石の上で生イカが、その身をよじりながらも、じゅうと
香ばしく焼けてゆく。
「走るの?」
「そう、走る。もうイカ焼けてるんじゃない?」
今にして思えば、清水の居酒屋、美味しい魚と珍しい焼酎に
その夜の自分のテンションは、いつになく高かった気がする。
親友が、イカを口の中で、くちゃくちゃと咀嚼する顔は、
ロバのようにもラクダのようにも見える。
「一緒にどう?」
箸で人を指すな。
*
富士川キウイマラソン。温暖な静岡とはいえ、11月の強風は、
肌に冷たく、走る気力までも凍らせてゆく。
「寒っ!風強いし」勝手わからず会場に早く到着しすぎたので、
ホットコーヒーで暖を取りながら親友にメールを送る。
「今、起きたところだよ」なんてネボケた返信が届く。
*
親友とその弟、知人、自分をふくめて男6人でのエントリー。
スタート地点まで歩く間、みんな余裕で冗談を交わしている。
自分の笑い顔だけ、ひきつっていたのは決して寒さだけではない。
本番まで2ヶ月も有ったにもかかわらず、計2日、3キロしか
走れていなかったからだ。
1度目は2キロ走った地点で、ひざがグキッと異音をはなち、
完治するまで仕方なく、芋焼酎をお湯で割ったりして過ごした。
今度こそと意気揚々に挑んだ
2度目は1キロ走った地点で、足首をグキッと捻り、
完治するまで仕方なく、ウイスキーを炭酸で割ったりして過ごした。
世間で言う不摂生だ。
そして無情にも、スタートの号砲が鳴った!
*
(ぜひ、ちびまる子ちゃんのナレーターの声で)
後半へ続く
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by rocknrollnight | 2011-12-03 16:48

5年ぶりの同窓会

山梨から清水へ向かう深緑の国道52号線は帰省渋滞。
カーコンポに元春、浜省、サザンのCDを繰り返し
突っ込み口ずさむ。今日だけはAKBも嵐も勘弁なんだ。
清水バイパスに入ると、やっと海が開けた。
*
高校を卒業してから何年経ったのか、もはや両手両足指を
どう折っても全く足りはしない、27年・・・。
自分を省みれば、性格はあいかわらず飽きっぽく人見知り激しく、
日々の生活は苦しいし、隣の芝生は青く見えるし、不倫するほどの
甲斐性もないし、ストレスをビールで流し込むし、腹は出るし、
そんなこんなの27年・・・いちいち書くほどのことでも無いな。
*
撮影機材を抱えて、清水マリンビルに定刻に滑り込む。
加齢臭やコロン、溜息や鼻息が充満したエレベーターを降りて会場に。
まず迎えてくれたのは、我がクラス女子幹事の元気な笑顔!!
「変わらないね!」とお互いに第一声。
前回、第1回の開催から5年「変わらない」は、ほめ言葉と勝手に解釈。
参加者は140名、前回よりは減ったらしいが、よく集まったものだ。
今回も頼まれて写真を撮影することになった。事務局サイドよりの撮影代
を支払うからという話を丁重に断る。ノドから手が出そうだったが、
もらったら、お酒飲めなくなるじゃないか!
*
実際には飲んでいるヒマなく、次々とクラス集合写真の撮影となった。
8組ともまとまりが無いのが「らしく」嬉しい。
以下、撮影しながらの感想を箇条書きに。
「こいつ、誰だっけ?」
・・・たぶん向こうもそう思っているだろう
「老けたな~、カッコよかったのに。ただのオッサンやん」
・・・たぶん向こうもそう思っているだろう
「そういえば、このコ、ちょっと好きだったよなあ」
・・・たぶん向こうもそう思ってくれていると嬉しい

*
おそらくは、人生に、現状に、百パーセント満足している奴はいないだろう。
みんな何かしらの問題や不安を抱えているだろうし、勢いで立ち向かえるほど、
心も体も若くはない。なんとか倒れないように踏ん張ってるのだろう。
*
では何が支えているのか。家族であり、友達だ。
同じ時間に、同じ校舎で学び、同じグラウンドを走った仲間。
もっと寄りかかってよかったのだ、同窓生に。
着飾って、カッコつけなくても、大風呂敷を広げなくても。
自然に素のままでいれば良かったのだ、同窓生に。
「いやあ、俺もつらくてさ、聞いてくれる?」って。

それでいいだろ?
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by rocknrollnight | 2011-08-16 18:37

Flowers In The Rain~つまらない大人にはなりたくない~

*
体育館内の照明が落とされたようだ。全校生徒らのざわついた声が、
緞帳の向こうから聴こえてくる。
高校最後の文化祭のステージ、僕はグランドピアノの白と黒の鍵盤を
見つめながら、ふうと大きな息をひとつ吐いた。
さあ始めるぞ、本物のロックンロールを響かせるんだ。
緞帳が開きはじめると同時に、僕が合図を送るとドラマーはステッィクで
カウントを取り始めた。
僕は「ガラスのジェネレーション」のイントロを叩くように弾き、叫んだ。
「つまらない大人にはなりたくない」と。

*
2011年6月18日、雨の有楽町、東京国際フォーラム。
佐野元春デビュー30周年を記念したファイナル公演初日。
電車に揺られながら、
雨の交差点で信号待ちしながら、
腹ごしらえにと入ったそば屋でビールを飲みながら、
ホール2階席への長いエスカレータを昇るあいだ、
僕は自身の「30年」を振り返っていた。
故郷清水の海、会えなくなった友達、傷つけ別れた女性、仕事、
山梨で出会った人達、家族。
宇宙の誕生や太古の歴史から見れば「30年」は一瞬のこと。けれども僕に
してみれば、やはり長い。
知らぬ間に、僕も「つまらない大人」になってしまったのだろうか。

1:CHANGES(Inst)
2:君をさがしている
3:ハッピーマン
4:ガラスのジェネレーション
5:トゥナイト

2階中央の僕の席からは、元春を中心にステージを俯瞰して見られる。
決して若くないメンバー、決して若くない観客。今夜、この空間で過ごす
数時間の出来事も、それぞれの想い出となり歴史となる。

6:カム・シャイニング
7:コンプリケイション・シェイクダウン
8:99ブルース

*
2週間前の放課後の音楽室。女子バンドの演奏が同じフレーズでつかえて
いるのが扉からもれ聴こえている。
「文化祭、この曲に変更したいんだ」渡した譜面さえロクに見ずに
「もう押し迫っているからムリ」とメンバーから猛反対された。
「佐野元春って誰?ギターソロも無いようだし」
口論に近い話合いのあと長い沈黙の時間があり、僕は文化祭への不参加を
告げ、ここに来ることも無くなるんだろうなと思いながら最後に付け加えた。
「今、歌うことに意味があるんだ。高校生最後のステージで歌うから意味
があるんだ。わかってもらえないかもしれないけれど」
女子バンドの練習が終わったようだ。帰りがけにドラムのおかずをシンプル
にしてリズムキープするように伝えなきゃな。
「説明している僕にも、はっきりとはわからない。
でも、この曲にはそんなパワーがあるんだ」
ギタリストである部長が、しょうがないなという感じで、
「わかった、少しだけ演ってみよう」

*
9:欲望
10:ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
11:ジュジュ
(ゲスト:佐橋佳幸登場)
12:月と専制君主
13:レインガール
14:SPIDER CODE(Inst)
15:ヤングブラッズ
16:観覧車の夜

アルバム「月と専制君主」からの数曲は、木のテーブルや陶器のカップが、
時を経て手になじんでくるような暖かく優しい演奏。

*
風だ。ビートに合わせた生徒の手拍子が大きなうねりとなり、
風となって、僕に跳ね返ってきた。ウケている。
おそらくみんな歌詞なんか聴いちゃいない。
僕のボーカルも、走り、フラットする。これは調子のいい証拠だ。
ドラマーがテンポが速すぎるという顔をこちらに向ける。
悪いけど、このままラストまで走るよ。
この風に乗るんだ。
*
17:君を連れてゆく
18:ロックンロール・ナイト

「ロックンロール・ナイト」の時、音楽の神様が降りてきた。
ような気がした。背筋にずわっと冷気が走り、見てはいけないものを
見てしまったような感覚になった。いたんだあ、音楽の神様。

19:約束の橋
20:ヤング・フォーエバー
21:ニュー・エイジ
22:新しい航海

休憩も入れず、エネルギッシュなステージもついに終盤に。
元春、いつになくウロウロとステージ上を歩き回りながら、
「セカンドアルバムに入れようとしたけれど、最後のワンフレーズが
降りてこなくて次のシングルでリリースしました。
20代の前半か、中盤か、忘れてしまったけれど、将来のことも何も
わからなくて、いろんな想いで、小さなアパートメントで書きました。
この曲を見つけてくれてありがとう」
23:SOMEDAY

「東北のファンの方からメールが届きました。この会場にいると思います。
こんなメールでした。今夜は心から楽しみたいです。みんなもそうだろ!?」
24:悲しきRadio

*
文化祭での演奏の反響は大きく、それまで全く喋ったことが無い僕のことを
嫌っているんだろうと思っていた級友に話しかけられたり、知らない女の子
から家に告白電話が有ったり、教師にはさらに目をつけられたりした。
僕は、そんな諸々のことはもうどうでもよかった。
僕は将来のことを考えなければならなかったのだ。
だって僕は宣言したのだ。
「つまらない大人にはなりたくない」と。

*
アンコール:アンジェリーナ
最後に元春は「ちゃんと書いてきました」と紙を広げながら、
「僕の音楽を見つけてくれて、そして愛してくれてありがとう」と感謝の
気持ちを述べ、スタッフ、ローディーの一人一人まで観客に紹介した。

*
10代の頃、「つまらない大人」の定義はできなかったけれど、漠然と
その言わんとすることは見えていた。
20代、30代、と社会と深く関わるようになり、見えなくなってしまった。
今ならば理解る。そして宣言したい。
「つまらない大人にはなりたくない」と。
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by rocknrollnight | 2011-06-26 17:28

無題

哀しいニュースは今も届く
明日はどうなっているのか
日々、不安でしかたない
テレビは言う「がんばろう日本」
僕には少しだけ虚しく響く

僕は思う
被災地から遠く離れた場所で

木を切ることをなりわいにしている人は
鋸を手に 山へ向かい

家を建てることをなりわいにしている人は
カンナを引き 釘を打ち

野菜を育てることをなりわいにしている人は
畑を耕し 種をまき

歌を歌うことをなりわいにしている人は
希望の歌を 風に乗せ

病気を治すことをなりわいにしている人は
血をとめ 薬を処方し

お金を数えることをなりわいにしている人は
一円の間違いもなく

国を動かすことをなりわいにしている人は
嘘いつわりなく

漫画を書くことをなりわいにしている人は
子供たちが 笑えるように

そうしたくてもできない人がいる
でも
そうできる人はそうすればいいと思う
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by rocknrollnight | 2011-03-26 17:20

元春が清水にやってきた!

*
思い出をジグソーパズルのように丁寧に並べてゆくと
僕の故郷、港町、清水が浮かび上がる。小さな町だ。
「本当に元春がここで演るのか」
今夏「第1回清水バンドフェスタ」のスチール撮影で、
このライブハウスに足を運んだ。バスケットコートぐらい
しかないフロアに立ったときの感想だ。
*
定刻に開演。コヨーテバンドに続き、元春が登場。
「近い」
生声も聴こえそうなほどな距離だ。
上手からギター、ドラム、元春、ベース、キーボード。
アルバム「コヨーテ」からテンポの良い曲ばかりが続く。
アルバムのメッセージを伝える、忠実に再現するという
堅苦しさは感じられない。何かを強要したりしない心地
良いビートに、決して若くない(もちろん僕も含めて)
オーディエンスも思い思いに揺れているようだ。
*
来年リリースされるセルフカバーアルバムから
「ジュジュ」
「月と専制君主」
「レインガール」
例えるなら「メインストリートから一本奥まったところに有る、
知る人ぞ知るレストランのメニュー」といった楽曲。
シェフ元春は、まったく別のアレンジに料理した。
*
手持ちのドリンクの氷も解け、会場がすっかり暖まったところで、
ここから一気に加速する。すごいGだ。
「僕は大人になった」
「約束の橋」
「ヤングブラッズ」
「ダウンタウンボーイ」
*
バンドはいったん下がり、アコーステッィクギターに変えた元春。
「ヤァ!ソウルボーイ」
「ヤング・フォーエバー」
あえてアンプラグドで演奏された2曲。なぜこの2曲か。
その意味を探そうと歌詞を噛みしめて聴いてみる。
*
再びバンドが入って、
MC
「この町は港町だよね?僕は港町が好きなんだ。
それは僕が魚座だからかもしれない。
そんな話はどうでもいいんだけれど」
*
「クリスマスタイム・イン・ブルー」
「サムディ」
元春の声すら聴き取れないほどの大合唱。
間奏のハーモニカには鳥肌が立った。
*
そしてアンコール
「アンジェリーナ」
*
この夜の元春はMCのたびに、何度も何度も
「またこうしてみんなの前で演奏できて嬉しい。
今夜は集まってくれてどうもありがとう」
と言っていたのが印象的だった。
礼を言いたいのは、こっちの方だ。今夜のステージは手を
抜けたはずだ。オーディエンスの数も少なく、スケジュール
もタイトだから、それを責める人もいないだろう。
だけど、元春は誠実だった。
髪を振り乱して歌い、その度に汗を放射状に飛び散らせて。
友の言葉を借りるならば、
「変わらないなあ、元春」

2011.11.29

以下は、-------------------------------------
元春HPレポートによせた文章です。

僕の前の人、大声で歌って、すみません。
僕の後ろの人、高く跳ねて、すみません。
僕に「アンジェリーナ」を紹介してくれた友よ、
生きてりゃよかったのに、バカヤロウ。
そして、元春。
「元春~」と何度も呼び捨てに連呼して、すみません。
だって、清水に来てくれて本当に嬉しかったんだ。
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by rocknrollnight | 2010-12-02 17:24

青い空 白い球

*
ドームは「うわぁ」と大きな歓声に包まれた。
巨人の坂本選手が放った打球は、美しい放物線を描き、僕の座る左中間
スタンドへ向かってきた。
親友とのメールのやり取りの中で「過去に戻りたいか」という件が
あった。僕は「戻りたくない派」だが、小学校4年生のあの夏の
グラウンドになら戻ってみてもいいかなと思った。
*
およそ住宅街に建つにはふさわしくない蔦の絡まった古びた洋館。
錆び付いた門、ひび割れたコンクリートの高い塀には、いたる所に
カタツムリやゲジゲジ、その他名前もわからないキモチ悪い虫が
うごめいている。
人が出入りしている気配は無く、幽霊が棲むとか、病弱な美少女が療養
しているとも言われていた。さすがのガキ大将グループも侵入を計画こそ
すれ、いざ実行には怖じ気づいた。
実際、勇気を振り絞って侵入してみたところで、西洋の鎧はギギギと鈍い
音を立て、二階から聞こえてくる少女のすすり泣く声に、逃げ出したに
違いないが。
*
小学三年の夏、この町に転校してきたばかりで友人も無い僕は、ひとり、
この古びた洋館の高い塀にストライクゾーンをチョークで書き、軟球の
ボールを日が落ちて辺りが暗くなるまで投げていた。
ある時は、仮想後楽園球場で巨人のエースに成りきり、中日打線をノー
ヒットノーランに押さえ込み、ある時は、仮想甲子園球場で大会直前に
怪我をしたチームメイトのために歯を食いしばる優勝投手も演じた。
(僕の妄想癖は、この頃からなんだな)
母子家庭だったから、母は普通に仕事を持ち(当時の母子家庭への社会的
受け入れや世間の風辺りは現代より大変厳しかっただろう)、帰宅後、
夕食の支度をしたから「ご飯ができたわよ」と呼ばれる頃には、かなり
暗くなっていたと憶えている。
*
新しい学校は、海のすぐそばにあり、授業中にも海風がざわざわと松林を
揺らす音が聞こえるほどだった。
勉強は前の学校の方が幾分進んでいたおかげで良くできた。
運動は体が大きかったこともあり、駆けっこも跳び箱も、ドッヂボールも
得意だった。だんだんと僕はクラスに溶け込み、帰り道が同じ方向の級友
とは一緒に帰って遊んだ。缶蹴り、フットベース・・・。
学校の有る日は誰かと遊んでいれば、すぐ夕方になったが、半ドンの日や
母が仕事に出かけた休日は、やっぱり、塀に向かってボールを投げた。
*
そんなある日の夕方のことだ。いつもの様にボールを投げていると、
リーゼントのコワイお兄さん(25歳前後)が、僕に声をかけてきた。
「コントロールいいじゃん」
上下真っ赤のジャージ姿だったと記憶するのは、その後の彼の情熱的な
性格から後付けで、連想しているかもしれない。
「ちょっと、俺の方に投げてみろよ」
「素手で、素手で受けるの?」
「いいから投げてみろよ」
胸の辺りに広げた手のひらに、僕は山なりのボールを投げた。
「もっと速い球だ」
「でも」躊躇する僕に
「思いっきり来い」とコワイお兄さんは手を広げた。
この人は何なんだ?わけがわからなかったが、僕は、へその下あたりに力を
こめて、右腕をムチのようにしならせた。最後は中指の先でボールを押し込
んで投げた。そうすると球の威力が増す。
パチッ!軟球が手のひらに当たる乾いた音が夕暮れの路地に響いた。
「一緒にチームでやらないか?」
僕はそうして町内のソフトボールチームに入団した。
僕をスカウトしたコワイお兄さんは、チームの監督で、大人も子供も彼の
ことを「ミッキー」と親しげに呼んだ。ミッキーは肩を壊さなければ、
かなりの所まで行ったらしい。かなりの所ってどこなのかはわからなかった。
*
4年生になり、ミッキーは僕をセンターに起用した。5、6年生の補欠選手も
いた中で、4年の僕の起用は大抜擢と言えるだろう。
毎晩、グローブに丁寧にワックスを塗って手入れをしてから眠った。
夏の地区ソフトボール大会。僕らのチームは順調に勝ち上がり準決勝を迎えた。
最終回、2点リードのまま迎えた相手チームの裏の攻撃。
僕らの投手は打たれながらも、アウトを重ねて、ツーアウト満塁。
このバッターを押さえれば勝ちだ。たとえシングルヒットでも1点止まりだ。
ボコッ!
打球は僕の守るセンターへ高々と上がった。平凡なフライだ。
定位置より少し前の落下地点に進み「オーライ!」と大きく手を広げた。
ボールは、濃く青い空に白い点となって浮かんで、ぐんぐんと大きくなって
落下してきた。
そして僕のグローブの中央に吸い込まれた。
僕は完璧にキャッチした。
つもりだった。「あっ」と思った次の瞬間、ボールは目の前をかすめて地面で
跳ねた。
グローブの土手や網では無い。スポットで取った感触が確かにあったのに。
ツーアウトだったから、ランナーは一斉にスタートを切り、ぐるぐるとベース
を駆けていて、僕はボールが手につかず、セカンドかショートの選手が
「何やってんだよ!」とバックホームをして・・・
そこから先のことは憶えていない。
ののしられたのか、泣きじゃくっていたのか、肩を抱かれていたのか、
母はいたのか、その夜の献立は僕の好きなカレーライスを作ってくれたのか、
何ひとつ思い出せない。
*
次の週の練習はサボった。その次の週も、そのまた次の週も。
グローブは固くなり、バットは埃をかぶった。
2ヶ月ほど経った頃、ミッキーが家にやってきた。
僕は「会いたくない」と母に言ったが、ミッキーは「会うまで帰らない」と
玄関前に長いこと立っていたので、仕方なく会った。
ミッキーは、僕が口を閉ざしているから、みんなが待っているぞとか、自分の
肩を壊して野球ができない話をしたあとに
「いつでもいいからな、また一緒にやろうぜ」と帰っていった。
*
5年生の1年間は、ボールを握れなかったけれど、6年生になったある日。
よく一緒に帰る友達が「久しぶりに来いよ」と嫌がる僕を誘拐犯のように
強引にグラウンドにひきずっていった。
しばらくは照れくさかった。どんな顔をしていいかわからなかった。
グローブは誰かが貸してくれたのだろう。内野に入りミッキーのノックを
受けているうちに、またやれそうな気がした。
家に帰りその事を母に話すと、新しいグローブを買ってくれると言うので、
僕はボールが飛び出さないように大きめのグローブとワックスを買ってもらった。
ミッキーは僕をファーストにコンバートした。
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すっかり生ぬるくなったビールを一息に飲み込み、一番健気そうな売り子さんを
呼んで、新しいビールをもらった。
今でも帰郷すると、当時の道を車で走ることがある。
グラウンドは人工芝が引きつめられサッカー場になった。
洋館は分譲されて住宅が建った。
幽霊はどこへ消えたのだろうか。
病弱な美少女は元気にやっているだろうか。
僕をグラウンドに連れ戻した友達は僕のことを忘れていないだろうか。
ミッキーは未だにミッキーと呼ばれているだろうか。
そんな想いをぎゅっと丸めて、見えない塀に向かって、
「さぁ、ピッチャー大きくふりかぶって・・・」。
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by rocknrollnight | 2010-08-27 12:13