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ある晴れた夏の日

*
ある晴れた夏の日、静清バイパスの長い直線。
強い日射しが駿河湾に、きらきらと反射している。
時々、波立つこともあるけれど、幸か不幸か、
何も代わり映えしない日々。
未来が不安ならば、アクセルを強く踏み込むことを勧める。
車窓の景色は時速100キロで、過去へと飛んでゆく。
そう、時速100キロで、未来へと進んでいることを体感できる。
*
「脳の手術を受けることになるかも」
幼なじみからの連絡を受けた時には、いろいろな事を考えて、
眠れないほど心配したというのに。
誕生日には、すっかり飲んだくれて忘れる始末。
翌朝、猛省し1日遅れのメールを送った。
「Happy Birthday!」
バイパスを降りて埠頭で撮った故郷の海の写真を添えて。
*
晩夏、花火大会。行く夏を切なく惜しみたいのに、
大音量の歌謡ショーがムードを壊している。
昼間の熱気がアスファルトに宿っている。
河原を抜けてきた風がそれを冷やしてゆく。
草の匂い、虫の声、秋が近い。
夜空に咲いた大輪は、夏の日の残像。
風が運ぶのは、儚い思い出ばかりか。
プログラム最後の大尺玉の花火に祈る。
世界平和よりも家族の健康を。
歌謡ショーは今年限りにして下さいと。
友の手術が成功しますようにと。
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by rocknrollnight | 2010-08-24 12:30

やあ、そっちはどうだい?

*
やあ、そっちはどうだい?
こっちは良くも悪くも、あいかわらずだ。
新聞の論説は、政治家の悪口を並べているし、
イチローは魔法の杖でヒットを打ち続けている。

*
あの頃、僕らが熱狂した佐野元春もデビュー30周年を迎えた。
アンジェリーナも三十路となったわけだ。いや待てよ、歌詞の
中では当時既に「NYから流れてきたバレリーナ」だったから、
プラス10ウン歳ということか。

*
砂時計の、こぼれ落ちる砂のように

「僕に残っている時間」は、さらさらと

僕の手の隙間から、すり抜け

「僕が過ぎてきた時間」の山に積もってゆく。

*
今も こうして
君と僕をつなぎとめているものは、何だろうか?

「記憶」よりもっと 曖昧な
「絆」よりもっと やわらかな
 何か

今も こうして
君と僕をへだてているものは、何だろうか?
「日常」よりもっと うすっぺらな
「運命」よりもっと 透明な
 何か

*
君がどこからか、こっそりと(あるいは大胆に)、
この世界を望遠鏡で覗いているだろうから
(覗き穴の周りに墨が塗られているとも知らずに)、
僕はインディージョーンズのように悪戦苦闘しながら、
キンと冷えたビールに今宵も辿り着けている。
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by rocknrollnight | 2010-06-11 12:50

佐野元春に一番近い日

*
「では皆様、拍手でお迎え下さい」
主催者の声とともに、開け放たれたドアから、
冷たい冬の空気を振りほどいて彼は現れた。
颯爽(さっそう)としている。
思えば、昔から佐野元春は颯爽と登場する。

ドラマーが小刻みなビートで空気を振動させると、
キーボードはクロスワードの枡目を埋めるように
ピッタリとそれに合う音を探り当てる。
佐野は、最初の詩がタイプされた紙に手を伸ばす。
一瞬、佐野の1メートル真正面にいた僕と目が合った。
ウインクされた、と言うのは嘘だ。だけど目で合図された。
「準備いいかい?始めるよ」たぶん空耳だ。
佐野が人差し指を立てると、演奏がミュートされ、空気が張り詰めた。

言葉が走り出す。

*
ある懸念について。
僕を含め、多くの佐野ファンは、ストラトキャスターをかき鳴らし、
ステージ上を駆け回りシャウトするパフォーマンスを佐野に期待する。
「ポエムリーディング」は、その対極に位置する。
マスクをした参加者が「私の咳が迷惑になるから」と後列に着座する。
息をすまし、眉間にしわを寄せて聞かなければならないのか。

*
ドラムから生まれたリズム達が、天井で、本棚で跳ね、浮遊する。
シンセから放たれた音符達が、それを包み込み、交わる。
佐野の言葉は、石のつぶてとなって波紋をおこす。
シンクロと破壊を繰り返す。

時には、自身の胸を叩きながら。
時には、足を強く鳴らしながら。
佐野は躍動する。

カフェの空気が、うねりだした。
観客の頭が揺れている。僕もかかとで床を打つ。
ノレる。

*
「次の題名は・・・
僕が旅にでる理由・・・」

このイベントは、雑誌『SWITCH』の25周年を記念して企画された。
また、佐野自身もデビュー30周年を迎える。
この詩は、まるで、この夜のために書かれたようだ。
感傷的なフレーズに涙があふれそうになる。
ここに引用する許可を誰かくれないだろうか。

*
帰路、新宿から山梨へ向かう列車の中。
何か、人恋しくなり、宛先不明のメールを打つ。

「貴方が旅にでる理由は?」

きっともらった人は困るだろうから、すぐに削除した。
車窓には自分の顔が反射っていた。

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--Date--
2010.02.19
19:30
--Event--
「SWITCH 25th Presents 佐野元春 Spoken Words Live」
--Place--
西麻布、『SWITCH』編集部地下カフェ「Rainy Day」
--Member--
Words. 佐野元春
Dr. 山木秀夫
Key. 井上 艦
一夜限りのプラチナチケットを手に入れた幸運な50名の詩人たち。
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『僕が旅にでる理由』の詩は、
元春の公式ホームページ
→ハートランドからの手紙
→#101の前半部
と、ほぼ同じものと思われます。
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by rocknrollnight | 2010-02-23 19:06

はじめての詩

はじめて君が 恋をしたとき
張り裂けた胸から リズムが溢れだし
ひとばんじゅう ひとばんじゅう
君は眠れなかった

はじめて君が フラれたとき
虹は凍てつき トーストは黒こげ
ひとばんじゅう ひとばんじゅう
君は泣いていた

はじめて君が 家を出たとき
小さなぬくもり 母の編んだセーター
ひとばんじゅう ひとばんじゅう
君は手紙を書いた

はじめて君が 酒を飲んだとき
夢を並べて ギターを弾いて  
ひとばんじゅう ひとばんじゅう
君は友と語った

はじめて君が 親になったとき
君自身が生まれてきた意味を知った
ひとばんじゅう ひとばんじゅう
君は「ありがとう」と言った

そして 君はまた一歩踏み出す
次に出会う
「はじめて」に
胸ときめかせながら

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これも「ワイルドターキー」のコンテストへの応募作品。
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by rocknrollnight | 2010-01-05 18:14

旅の詩

ああ そうだね
深い森だ 
今夜はここで過ごそう
なあに 急ぐ旅でもないさ

枯れ木を燃やし
火をおこそう
ジョークを燃やし
知識を燃やし
過ちや罪も燃やしてしまおう

酒を酌み交わし
陽気な唄を
初恋の唄を
母が枕元で口ずさんでくれた唄を

やがて
旅の途中についた
傷を癒し 眠ろう
こんな深い森で
どんな夢を見るというのだろう

ああ そうだね
とても静かに 夜が明けてゆく
新鮮な朝の光にまじって
潮の香りがする
どうやら海が近いようだ

いいかい?

すべてのものは 動き続けている
止まっているように見える
木々も 石でさえも

過去から未来へ

すべてのものは 動き続けているんだ

さあ 僕らも 歩きだそう
なあに 急ぐ旅でもないさ

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この詩は「ワイルドターキー」ポエムコンテストに
応募した作品です。
つたない文ですが、現在の心境は素直に
表していると思います。
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by rocknrollnight | 2009-12-28 12:40

「私とJリーグとスタジアム」エッセイ

照明に浮かび上がった緑色のじゅうたんに、
選手が散らばってゆく。

「ねえママ、前で見てきてもいいでしょう」
メインスタンドの階段を駆け下りてゆく少年の
背中に「気をつけるのよ」とママが声をかけた。
いや、妻だ。正しくは元妻。

起業に失敗した私が家族と別れた時、生ま
れたばかりの息子との面会も禁止された。
だから、息子はすぐ後ろの席に座った私の顔
を見ても父とは知らない。

「サッカー好きなのか?」
「あなたに似たみたい」
一年に一度、稼ぎと一緒にチケットを送ると
妻は息子と、スタジアムに足を運んでくれた。

膠着した試合、後半ロスタイムにエースの
ゴールが突き刺さった。
「やった!やったね、パパ!」
えっ?
「あっ、ばれちゃった」息子が舌を出した。
歓声が鳴り止まないピッチは、涙で滲んで
きらきらと輝いていた。

***
「私とJリーグとスタジアム」エッセイ募集
落選(涙)作品です。
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by rocknrollnight | 2009-09-03 12:38

ちいさな船

『ちいさな船』

海の見下ろせる 古いレストラン
「パパ、聞いてるの?」と 子供らの声

あれは二十歳と少し 記録的猛暑
ちょうどこの席で 彼女と別れた

  若すぎた二人の生活( くらし )は
  地図のない航海のよう
  さざ波にさえも 揺らめいた
  ちいさな船


水面を反射した 夏の欠片( かけら )が
彼女の頬つたう 涙で跳ねた

「今日のパパ、変よ」 妻が微笑む
「なんでもないさ」と コーヒー飲みこむ

  若すぎた二人の生活( くらし )は
  地図のない航海のよう
  青春という海に 揺らめいた
  ちいさな船
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by rocknrollnight | 2009-05-26 12:37

ボクと清志郎と、時々、吉川

*
この雨にやられてエンジンいかれちまった
俺らのポンコツ とうとうつぶれちまった
         『雨上がりの夜空に』

「ウィ~ッス」
また今日も、呼んでも無いのに吉川は来た。
どうでもいい男なので「きっかわ」でも「よしかわ」でも
かまわないが、一応「よしかわ」だ。
坊主頭に、学生服を不良っぽくルーズに着ている。
「ウィ~ッス」
「部活中なんだけど。帰宅部は去れ」
放課後。音楽室は先輩バンドが練習しているので、
後輩の僕らは楽器置場の埃っぽい部屋で、各人が
それぞれのパートを練習している。
僕は買ったばかりのストラトを抱えてはいるが、
窓の外、下校中の他校の女子生徒ばかり見ている。
「そんな冷たい態度しないでよ。お?ギター買ったの?」
「お前が来るとフ~キが乱れる。ギター触んなよっ」
「いいじゃね~かよ。
この雨にやられて~エンジンいかれちまった~」
イカレてるのは、お前の顔と頭だろ。まったくRCなんて
どこがいいんだ。単純なコードで騒いでるだけだ。

*
昨日は車の中で寝た あの娘と手をつないで
市営グランドの駐車場 2人で毛布にくるまって
              『スローバラード』

「何コレ?」
吉川の部屋。見栄っパリの洋モクの煙が充満している。
「何コレ?」と僕はもう一度、尋ねた。
「何って、親父の部屋からくすねたエロ本」
バカ!じゃなくて
「今、かけてるレコード。RCでしょ?」
「スローバラード。カーラジオから~」
「うるさい!お前が歌うんじゃない!黙って聴け」
何コレ?このせつない感じ。これがRC?

*
Woo 授業をさぼって Yeah 陽のあたる場所にいたんだよ
寝ころんでたのさ 屋上で タバコのけむりとてもあおくて
                『トランジスタ・ラジオ』

佐野元春や糸居五郎のラジオから、最新のヒットチャートや
スプリングスティーン、ビリージョエル、ビートルズ、R&R、
ブリティッシュロック、パンクロック、と何でも聴いていた僕は、
RCサクセションの、忌野清志郎の音楽、メッセージを理解する
ようになった。理解するなんて言葉、似合わないだろう。
感じればいいんだゼ、Baby。
学校の屋上でタバコをふかしながら、尋ねた。
「吉川、卒業したらさあ、どうすんの?」
「あ~そんなことより、セッ○スしたいなあ」
「お前、そればっかりだな」
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by rocknrollnight | 2009-05-10 12:36

「おつかれさまでした」と彼女は満面の笑みで

*
僕の勤め先は山梨ローカルのマスコミで、ひとつの建物の中に
新聞社や放送局が入っている。
土曜日の夕方には生放送で、県内の情報を電波に乗せている。
情報番組といっても、ニュースみたいな堅苦しいものではなく、
グルメや行楽など、季節に応じた身近な話題を紹介していて、
スタジオセットも居間を模している。
家族が茶の間で、一家だんらん過ごしているシチュエーション。
おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、
子供は、中学生のお姉ちゃんと小学生の弟がいる。
おばあちゃんと子供は素人で、あとは名の通ったタレントさんが
演じている。

*
ちょうど本番前のリハーサルが終わった時間だろうか。
スタジオ近くを通りかかった時、お母さん役の女優とすれ違った。
「こんにちは」と僕が挨拶をすると、
「おはようございます」と返された。
放送局のルールで、仕事入り(前)の時は「おはようございます」と
挨拶をすることを知ってはいたが、その時は、
「こんにちは」って返せばいいのに、ギョーカイぽくってイヤだな
と感じた。

*
番組の方はというと、生放送。アクシデントは少ないが、
時間を繋いだり、お父さんやおじいちゃんのアドリブに対応したり、
子役のフォローをしたりと、お母さんの役どころはかなり重要だ。
彼女はまるで実在の母親のように、子供の面倒を見て、笑顔で暖かい
雰囲気を番組にもたらしていた。
今にして思えば、アットホームな番組の方向性を作ったのは、
彼女の貢献が大きいと思う。

*
ある夏の夕方、僕は外の写真撮影の仕事から帰ってきた。
暑い一日だった。シャツには汗が塩を吹いたあとが白く残り、
両肩に、くいこむほどの機材を抱えていた。
彼女は番組終わりで、玄関から出てゆくところだった。
僕は疲れていたが、道を譲った。すると、
「おつかれさまでした」と彼女は満面の笑みで声をかけてくれた。
その瞬間、僕は、清水由貴子さんのファンになった。
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by rocknrollnight | 2009-04-22 12:34

浜田省吾ベストCD作成にあたって

高三の夏休み「海の家」の呼び込みのバイトをした。
県外ナンバーの車に乗る海水浴客を呼び込むのだ。
「海の家」はいくつか隣接していて、隣の呼び込みには、
負けてはいけない。
僕の服装はというと、白いTシャツにブルージーンズ、
バンダナにグラサン、浜省ファッションである。
まあ、ファッションにかけるお金が無いからバイトして
いるわけで。
隣の呼び込みのニイチャンはというと、やっぱり浜省
ファッションである。やがて学校は違えど同級生と判り
意気投合し、バイトのあと喫茶店に寄ったりした。
彼は「バイクが欲しくてさ、お前は?」
「バンドのスタジオ代と新しいギターも欲しいな」
やがて夏は終わり、海の家は取り壊され、それ以来、
彼とも会わなくなった。僕は楽器店のウインドウに
光っていた白いストラトキャスターを手にしたから、
彼もバイクを手にいれたことだろう。

年月が経っても色褪せない浜田省吾の音楽を聴くたび、
恋やギターに夢中だったあの夏の日の、そう、
バイト帰りに、オーダーしていた喫茶店の
甘ったるいアイスカフェオレを想い出す。

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仕事に生活にちょっと疲れていた僕は、深夜、浜田省吾の
CDを引っぱりだして、好きな曲を並べはじめた。
まとめてみるとCDで2枚にもなった。
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by rocknrollnight | 2009-03-24 12:32